幽霊姫は止まれない!

 この子は俺が騎士団の見学から逃げ出したのを知っているのかと焦ったが、どうやら違うようだった。

(それにしても、恋多き騎士って……)
 それは別に騎士の例えじゃなくても良かっただろ、なんて呆れ、そして子供がなんてことを語るのだと思いガクリと項垂れる。
 どうしよう。すごい疲れる。

「あら。あんまりピンとこなかったかしら。やっぱり例えじゃダメなのね」
「いや、例えの種類じゃない?」
「そうね。じゃあ……私の話にするわ。私ね、お母様がいないのだけれど」
「ごふっ」

 方向転換したのかと思ったら、突然の暴露に思わず吹き出す。子供の口から出る内容にしては重すぎて、同じく子供の俺には処理しきれない。
 仕方なく俺は、どうしようかと冷や汗を滲ませながら、ただ黙っていた。

「お母様ね、最初からいなかったの」
「そ、そうなんだ」
「だから、いつか自分が母になる時、これがお母様からの愛よって教えてあげられないの」
「……」
(お、重い……)
 ポツリポツリと語られる内容がどれも重くて、ごくりと唾を呑む。