スペアだから、と落ち込むどころか、むしろ長男よりも自由が利き、長男よりの求められる可能性だってある。しかも、自由恋愛を選ぶことだって可能なのだ。だって後継ぎは兄なのだから。

 もちろん娘も大事にされる。言葉は悪いが政略結婚の道具としてや、下位貴族ならば玉の輿なんかも狙える。もちろん後継者教育を受けて婿を取ってもいい。

 そして最も不遇なのが、『三男』以下の男児である。

 理由は簡単。スペアにもなれず、求められる先もないからだ。

 そういった三男は、騎士を目指すか市井にくだるしかない。平民として生きるか、騎士として過酷な訓練に身を置くか。
 現状このリンディ国は平和で周辺諸国との関係も悪くはない。

 戦争なんてことは今のところは起こりそうもないが、それでも軍事力は必要だ。
 つまり、求められていない力をただただつける訓練にいそしまなくてはならない。まぁ、騎士としての素質があれば護衛騎士や近衛騎士に抜擢され、騎士爵なんてものも与えられるかもしれないが──それは、本人の資質と、自分ではどうしようもない『魔力』の有無によるだろう。