貴族の中でもっとも価値が薄いもの。それは爵位の高低関係なく〝三男〟という存在である。
 貴族家に生まれた長男は最も優遇される。その家の後継ぎだからだ。そして次男もしかり。何故なら長男に何かあった時の『スペア』としての役割があるからである。

 スペア、なんて言い方だと冷遇されているように聞こえるかもしれないがそうではない。スペアということは当然長男と同じだけの後継ぎで必要な教育が与えられる。
 スペアという存在が必要なくなったとしても、それだけの知識が与えられたならば引く手あまただ。

 お嫁さんを貰って長男サポートとして領主の仕事をしてもいいし、領地にいる兄に変わり、王都のタウンハウスを管理してもいい。もちろんタウンハウスを全ての貴族が持っているわけではないが、そもそもそれだけの知識を与えられ、領主となりえる能力を持っているのならば、男児の生まれなかった高位貴族から婿にと求められることもある。