幽霊姫は止まれない!

 また、エルフという種族は静かに暮らすことを好んでいる。そのことを彼女も知っているからか、たまに孤児院へ家で採れた野菜を持って行っていたが、孤児院の前にこっそり置くだけで誰にも会わないよう気を配っていた。

「会っても構わないんだぞ」
 そう言ったこともあるが、彼女は頷かない。

「アルフォードとの生活を大切にしたいから」
 と言った彼女は、いつものように穏やかな笑みを浮かべていた。

 私たちの間には決定的な時間の差があった。
 彼女と暮らし始めて三十年がたった頃、彼女は四十八歳になった。だが、当然赤子のままである。
 日々衰えていく、と嘆くが、私からすれば四十も五十も赤子だった。いつまでも私の可愛い、そして愛おしい唯一の番。

 そのまま伝えると、貴方には敵わないわ、と彼女はやはり笑っていた。
 あとどれくらい彼女と過ごせるのだろう。

 いつか彼女を看取る時が来る。それはわかっていた。
 だがその最期の瞬間まで彼女と過ごせるのならそれも悪くない。

 エルフにとってまるで瞬きのような短い時間。
 けれど、この時間が何よりも輝いているから。

 ──どうか四十年後も、五十年後も。