幽霊姫は止まれない!

 ついそんな風に考えてしまった自分に、私自身のことなのに戸惑うばかりだ。

 だがいつまでも混乱してはいられない。

「歓楽街が娼館だったなら、どうして聖女がそっちへ向かったのかしら」

 そんな場所に教会はない。
 もちろん目的地は歓楽街ではなく、その手前かもしれないけれど。

「今の私たちは疑うのが仕事だもの。聖女が歓楽街へ通っているのかどうか、調べるわよ」
「うぅ、わかりましたぁ……」

 ◇◇◇

「ひとまずここで待機ね」
「はい」
 嘆くオスキャルをなんとか宥めることに成功した私は、ビアンカ姉様が確認してくれたスポットまで行きふたりで通りを見渡せる小さな酒場へ入る。
 路地に隠れていてもいいのだが、どうせ変装しているのだ。変にこそこそしているより堂々と街に溶け込んだ方が目立たないだとうと判断したのである。
(ま、酒場だけど水なのよね)
 
 私もオスキャルも成人しているが、うっかり酔って聖女を見失っては元も子のない。
 だからこそ酒場の亭主に嫌な顔をされながら水だけで張りこんだのである。
 そしてそんな視線に耐えるという苦労のお陰か、ローブを被ったひとりの令嬢が目の前を通った。