幽霊姫は止まれない!

「ちょっ、簡単に私のこと見つけないでくれるかしら!? オスキャル!」

 こそこそと二階の私室から抜け出し、窓を伝って一階南の貴賓室へ降りた私は、バルコニーから手すりを乗り越え外に出る。その先にある生垣の右下、植え直しのための僅かな穴から王城の外へと出ようと画策していた私は、完全に撒いたつもりでいた自身の護衛騎士にがっちりと腕を掴まれ拘束された。

「俺は子守がしたくてソードマスターになったんじゃないのにッ」

 頭から穴へ飛び込んだ私を引きずり出しながら、護衛騎士のオスキャルがわざとらしい声で嘆くが、しっかりソードマスターたる所以でもある魔力を体に纏っておこなう身体強化、いわゆるオーラを使って私を捕まえている。こちとら何も力を持たない女なのに、彼のこの絶対に逃がさないという気概を感じげんなりした。本当に容赦ない男である。

「ちょっと。一国の姫を捕まえて子守だなんて酷いじゃない! あとオーラを纏うのは大人げないわよっ」
「一国の姫という自覚があるなら、こんな穴から脱走しないでください。エヴァ様!」