「違うの!? 貴女はオスキャル様の恋人でありながら、オスキャル様を愛されていない、一方的に彼からの愛を搾取しているということなのかしら!?」
「えぇっ!」
 訓練する騎士や貴族令息たちを応援しに来た令嬢たちの視線すらも集めるこの状況に、流石に冷や汗が滲む。
 しかも、私の護衛騎士であるオスキャルが一目散に駆けてくる。私を庇うためだろうが、今彼はこの言い合いの当事者だ。ややこしくなりそうでできれば来てほしくない……が、くそ。流石ソードマスター、それなりに距離があったのに、しれっともう私の一歩斜め前にスタンバってしまった。

「ど、どうしようかしら、この暴走レディ!?」
「エヴァ様、自己紹介ですか?」
「黙りなさい! 私は清廉な淑女であって暴走なんてしたことはないわッ」
 ギロッとオスキャルを睨み黙らせた私だが、一番黙らせなければならないのは目の前のイェッタである。
 そんな彼女は、私たちのこのやり取りが気に食わなかったのか、握った扇をわなわなと震わせていた。