空に還る。

「あなた達が抱き締めたかとは姉さんのことだけね?」

「きっちゃん…?」

「あんずはずっとここでまた家族が揃うとば待っとった。あんずば傷つけるその手がいつか頭ば撫でてくれるとば待っとったっちゃなか?」

母の肩がビクッて震えた気がした。

今までずっと、空気になることに徹していた義父が今ようやく、私の目を見た。

「ここはよかね。あげん機械もあって。時間が経ってもぬくか飯ば食える」

きっちゃんはキッチンを振り返る。
きっと電子レンジのことを言っているのだろう。
事情を知らない両親はきょとんとしている。

「コンビニって言うとや?そこ行けばどげんもんでも揃う。冷めとってもあれば使えばほっかほかやもんね。でもなぁ、どげんぬくぅしても孤独で食べる飯はしょうもなかったい。全然ぬくくなか。どげん冷めとっても、おかずなんかいっちょん無くても、塩むすびだけでも大事か人と食べる飯の何倍もうまかこと、知っとるやろ?あんずはずっと待っとった。いただきますも、おはようも、おやすみなさいも、応えてほしかったんはあなた達じゃなかったとね?」