空に還る。

「会ってどうすっと?また責めると?」

「そげんことせん。話したかことは子どもんことたい。偉そうにって嫌悪されるかもしれんけど…母親になる決断ばしたことば褒めてあげたい。あの子にとっての母親像は私たい。絶対に親になんかなりたくなかやろ?友達にも言いよったらしか。″母親にされてきたことが、自分の中の家族の全てやけん。いつか自分も虐待してしまうっちゃなかかって怖くて堪らん。それでもこの子に逢いたい。自分のことよりも誰かば愛する気持ちば知りたい″って…。怖くて堪らんでも、それでも決断してこの子の為に生きていこうとしよる。よう頑張ったねって今度こそ抱き締めてあげたい」

今度こそ、って何って思った。

姉のことは十分抱き締めていたじゃないか。

罵声を浴びせるたびに、
刃物をチラつかせるたびに。

そうすることで全ての罪が許されるみたいに、抱き締めて「大切だからおかしくなってしまうんだ」って…。

抱き締めてほしかったのは私のほうだ。
頑張ったねって、ただ褒めてほしかったのは私のほうだ。

私は嫉妬した。
それはこの、赤ちゃんにだ。

姉は私にもなんにも言ってくれないまま居なくなった。

妊娠の相談もしてくれなかった。
そして、私の知らない誰かと助け合って、
新しい命を誕生させた。

今度こそ一人ぼっちになってしまったって思った。

どこかで期待していた。
姉はきっと私に会いたがっている。

私を迎えにこれるようにどこかで必死に生きている。
だからまだ連絡もできずにいるんだ。

そんな甘い期待を。

この町を捨てられる希望を、
心のどこかで姉の人生に賭けていた。