空に還る。

二部、三部と目を通して、
写真と状況報告とかもあったから説明をされなくてもなんとなく把握できたけれど、
母のほうに書類を差し出しながら「なに、これ」って言った私の声は震えていた。

「お姉ちゃんのこと、調べてもらっとったと」

「またこげんことして。バレたら今度こそヤバかばい」

「そうやね」

母は自嘲気味に笑った。

「あの春のことがあってから、お姉ちゃんにもこのことば伝えたかけん俺達で探し始めたっさ。中学の同級生んとこに連絡してみたり、ほら…ちょっと世話んなった警察の人とかもおるやろ?最近なんか名前上がっとらんかとか聞いて回ってさ。そいだら友達の一人と連絡の取れてね。毎週行きよるとこのあるって。その周辺まではさすがにうろつけんけん、ココに世話になったっばい」

「ストーカーみたい」

「そうでもせんばもう方法の無かったけん…」

母は目を潤ませた。
まるで本当に被害者みたいだった。

何よりも愛情を注いだ最愛の娘を失った母親みたいな顔をして。

薄気味悪かった。

あぁそうですか、ってすぐに信用できるわけがない。

私は憶えている。

この人の奇声を、
拳の硬さを、
手のひらを染める紫色の痣を。