空に還る。

「ごめん…ごめんなさいあんず…。二人ば置いて家ば出た時、毎日後悔した。なんで抱き締めてあげることができんかったっちゃろって。二人が産まれた瞬間も忘れたことなんかなか。あげん幸せやったとに…なんで私が二人ば不幸にしてしまったとやろうって。私もね、あんた達ば抱き締めた感触なんか憶えとらんかった…。お母さんの手にはあんた達ば殴った感触しか…。こん人と出会って、全部事情ば話した。もう一回二人でやり直そうって言ってくれて、勝手やけど子ども達ばもう一度ちゃんと愛せるチャンスば貰ったように思えてね…。帰ってきたと」

「嘘ばっかり。お母さんはなんも変わっとらんかったし、お父さんだって見て見ぬふりやったやん。人間って怖かね。自分ば擁護する為やったらどげん綺麗事でも平気でベラベラ喋れっとね」

「あんず。お母さんはね、毎日泣きよった。お前ば殴ってしまうたびに、お姉ちゃんば連れ戻せんたびに自分のせいやって。後悔して…」

「あっはははは!頭おかしかやろ!なんなん、同情してもらいたかと?えらい痛か思いして産んだ子ば不幸にしてしまう私可哀想って?なんでこがん人生になってしまったとやって後悔してる自分が悲劇のヒロインやって?殴るんやったら後悔しろよ!おねぇの話も冷静に聞けんで更生する機会すら奪ったんやったら後悔しろよ!当たり前やろ!私達が頼んだんか!?どうしてもここに産まれたかって、どうしてももう一回あんた達と暮らしたかって!私はね…痛い思いしてもあんたの足音に怯えても結局は一人っきりでは生きていけん自分が一番憎かった。ほっといたら餓死だってできるし死ぬ方法なんかいくらでもある。それすらできん自分も憎かった。まだ…戻れるかもしれんって…期待してしまうとも気持ち悪かった…」