空に還る。

きっちゃんが私の手のひらに触れる。

ふと気づく。
きっちゃんの手のひらが私よりも大きいことに。

最初に来た時はどうだったっけ。
足は私よりも大きいから、姉のビーチサンダルを貸したんだった。

手は、どうだっただろう。
もしかしたらきっちゃんもここに居る数日間で、
ちょっとずつ成長しているのかもしれない。

時空を超えてしまったって私達は目の前でそれを感じることができるのに、
ずっと目の前で、あなたが産んだはずの私から意識的に逃げていたことが、未だに私は苦しい。

「あんずがダメやけん逃げたっちゃなかと。お母さんがダメやったと…」

全部言ってやろうかと思った。
そうだよ、って。
暴力もネグレクトも、姉が潰れてしまったことも、
愛されたいのに、愛されることが怖くなってしまった私のことも。

ねぇ、お母さん。
私さ、やり返そうと思えばいくらでもできた。

お母さんよりも身長が高くなっていることに気づいた日、
力だってきっと私のほうが強いんだって分かってた。

いくらでもやり返せたのに、
お母さんを壊してしまうことなんて簡単だったのに、
それをしなかった私の気持ち、あんた達に分かるわけないじゃん…。