空に還る。

八月十三日。

現代なんだから現代らしく、
スマホを所持しているのなら連絡くらいしておけばいいのに、
また突然義父が帰宅してきた。

きっちゃんがうちにやって来てからは初めてだった。

お昼ご飯に茹でた素麺をすすっている時だった。
垂れ流していたテレビからはお昼のバラエティー番組のグルメコーナーで、
一生のうちにお目にかかれることはきっと無さそうなステーキ肉がいい色に焼き上がっている映像が流れている。

「え、おかえりなさい…」

義父はきっちゃんをチラッと見て、
頭を掻きながらソファにドカッと腰を下ろした。

「珍しかね。どうしたと」

「自分の家やもん。帰ってきておかしかや?」

あんたの家ではないって心が叫んでいる。
この家はじいちゃんが建ててくれた家だ。
養育も放棄してる養父のお前の物では絶対にない。

「遺産目当てやったりして」

「…は?なんば言いよっとや」

「別に。滅多に帰らんで娘ば放置しとるくせにようそげんこと言えるなって」

「お前…」

立ち上がった義父を制するみたいに、
握りっぱなしだった箸を置いてきっちゃんが義父の前に駆け寄った。

「初めまして。貴市です」

「…あぁ。あんたが。おままごとのね」

「おままごと?」

声を震わせた私を見て、
義父が溜め息をついた。