空に還る。

「んー…あんず…?」

「ねぇ、大変」

「どげんしたとや…」

「もう七時になるばい、夕方の。十二日ばい」

「それがどげんって…?」

「もー!一日中無駄にしてしまったったい!」

「あんず」

「なに…」

「よかたい、別に」

「いいわけっ…」

「気持ちよかったねぇ。一日…なーんもせんで…よう寝たばい。ここはよかねぇ。いくらアホごた寝ても警報もなか。なんも怖くなか」

よっぽど遊び疲れているのか
きっちゃんの瞼がまたスーッと閉じていく。

ソファの下に落ちてしまっているブランケットをきっちゃんの体に掛け直した。

昨晩から網戸にして窓を開けっぱなしにしていたからか、
冷房はついていないけれど、堪えられないほどの暑さではなかった。

安心しきったように眠るきっちゃん。
そんな風に言われたらもう起こせないじゃん。

ここにずっと居てって…思っちゃうじゃん…。

「きっちゃん。夜ご飯、どうしようか」

かすれた声で囁いた私の声に、
きっちゃんは本当に聴こえていたのか、
奇跡的な寝言か分からないけれど、ふにゃふにゃのやわらかい口調で
「あんずの味噌汁ば飲みたか」って言った。

「ばーか。あれ、インスタントだよ」