空に還る。

「登校日やったら絶対みんな予定空いとるやん。集会終わったら一回帰ってから行くっさ」

「えー、着くの遅そう」

「良かとって!行ければ満足なんやけん」

「なにそれ」

目的は「友達と集まって海に行くこと」なのか。
水着だって別に本気で泳ぎたいわけじゃない。
披露したいだけだ。
友達の輪の中に居ることが重要なだけだ。

それなら別に、海じゃなくてもカラオケでもなんでもよかとにさ。

もうそれからもダイエットだとか脱毛したいとか日焼け対策がどうとかって琴音は事あるごとに騒いでは、
登校日の三日前にようやく納得のいく水着を購入した。

そうやって迎えた八月九日。

ベッドの上で仰向けになったまま、見慣れ過ぎた天井をボーッと見つめる私。

…ちょっと待ってくれん?
今、何時?

恐る恐る枕の上で首だけを横に向けて
ベッドのサイドテーブル上の目覚まし時計に目を遣る。

十時半。

十時半…………大遅刻どころの騒ぎではない。
むしろ、なんなら被災者の講演も、もう終わるっちゃない?
今から大急ぎで準備したって、そもそもバスが無い。
登校日はいつも、十二時前には解散になる。
十一時半くらいのバスに乗ったって、行く意味は全く無い。

あー、こんな時にこのクソ田舎の利点を思いつくなんて。
不便な田舎のせいで「諦めが良くなること」、
生まれて初めて、分かったかもしれない。