空に還る。

きっちゃんはせっかくうどんで温めた体をかき氷で冷やして、
壁付けされているいくつかの扇風機に寒いって言いながら、
おでんまで食べた。

真夏におでんなんて考えられないけれど
海の家だからこそ食べたくなるメニューだと思う。

「きっちゃん、よう食べるねぇ」

関心したように言った琴音に、
きっちゃんはこんにゃくを口いっぱいに頬張りながら「自慢すったい」って言った。

「誰に自慢すっと?」

「母さん達に。教えてやると。頑張って生き延びたらこげんおいしかもんば食べれるごとなるとばいって。やけん負けたらいけんって」

「そうやなぁ。なぁ、きっちゃん。もしちゃんと帰れてさ。こっちの時代で俺達が今のきっちゃんば見つけきれたら一緒にご飯ば食べようか?」

「よかね、それ!私もさんせーい!ね、あんず!」

「うん。それってすごい素敵やね」

「ありがとう。そいだら意地でも生きんばね」

「当たり前たい。きっちゃんは戦争で死なん。絶対に。信じとるけん」

お腹いっぱい食べた後は、
きっちゃんとサコソウはまた海に走っていった。

「体力モンスターだ」って琴音が呆れるように言って、
私達は少し空いてきた海の家でもう少しゆっくりさせてもらった。

扇風機の風が心地よい。
このまま眠ってしまいそうだった。