空に還る。

海でハシャぎまくっていたきっちゃんとサコソウが
砂浜に足を取られながら、こっちに走ってきた。

「きっちゃん、腹の空いたとって」

「じゃ、海の家でなんか食べよ。あんずは?」

「私もよかよ」

「なんか食べれっとね?」

「そうばい。ご飯とかアイスとか色々あるけん。好きなもん食ったらよかたい」

サコソウの言葉にきっちゃんは瞳をキラキラと輝かせた。

「令和は凄かね」なんて言って、
きっちゃんの中で「令和」がすっかりヒーローになっている。

海の家は混雑はしていたけれどいくつか出店していて、
四人が座れるテーブルが空いている所にスムーズに流れ込んだ。

壁に掛けられている短冊状のお品書きを見て、
きっちゃんは「ハイカラのもんばっか…」って言って頭を抱えている。

「きっちゃん、海で体冷えとるやろ?とりあえずうどんとか、ぬくかもんにしたら?」

「そいだら、わかめうどんにすっか」

「アメリカンドッグとかフランクフルトもあるばい」

琴音の提案に、きっちゃんは「アメリカ…?」って眉をひそめた。

「あっ…」

「琴音、大丈夫やけん。きっちゃん、信じられんかもしれんけど、今はアメリカとも仲良しなんよ。アメリカでも日本食は人気やし、アメリカンな食べ物もおいしかっばい。アメリカンドッグは日本人が考えたもんやけどね。ソーセージにパンみたいな…パン…あれって何?」

アメリカンドッグの衣の部分を説明できない私を
琴音とサコソウは笑った。

きっちゃんは安心したような顔をして、
「そうたいね。ここは令和やもん。それも貰おうか」って歯を見せて笑った。