空に還る。

八月十一日。

白浜までは長崎港からフェリーで三十五分。
中学生以上は大人料金で千二百円。

きっちゃんにとっては私が保護者みたいな感じなのに、
きっちゃんのフェリー代は三人で割り勘になった。
ほんと、二人に甘えっぱなしだ。

「疎開ごたね」

「それよりもきれいかやろ。この船のほうが」

「そうばい。それにフェリーはそげん揺れたりもせんたい。怖かなら俺に掴まっとけばよかばい」

「ねぇー。聞いてよ、あんず。サコソウさ、昨日からすっかりきっちゃんのお兄ちゃん気分ばい!帰りも、夜電話した時もずーっときっちゃんのこと言いよっちゃもん」

「あはは!きっちゃん、よかったたい」

「僕はうれしかけど。兄さん達がヤキモチば妬かんやろうか?」

「それは妬くかもね?」

琴音が挑発するみたいな流し目で微笑んで、
きっちゃんは「それでもみんなに会わせたかね」って、少年らしい無邪気な顔で笑った。