空に還る。

「あ、そうだ」

「なに、琴音?」

「全然いい案も出とらんとに悪かけどさ、明日みんなで海行かん?」

「は?海?そこの?」

「ンなわけなかたい。白浜やん」

「いやいや、なんで?」

「お盆前に行かんばクラゲの大量発生するやろ。それにお盆過ぎたら地獄の釜の開くって言うやん」

土地特有の言い伝えなのか、
お盆が過ぎたら海の底に地獄の釜が開いて、
死者達に引きずり込まれるっていう迷信がある。

私達は小さい頃から祖父母世代から言い聞かされていて、
もはや刷り込みで信じきっているから、
お盆を過ぎると誰も海では泳がない。

「なんで白浜?」

「きっちゃんとの思い出作り」

「思い出…」

「思い出作りの為にここにおるとやろ?なら叶えんばたい」

「それやったらあの海岸で…!」

「どうせやったらよか海行こうよー。きっちゃんの時代にはあげん施設なかやろ?見せてあげたかたい。それにさ、」

「それに?」

「水着も二回は着らんばもったいなかたい」

「もう。それが目的やん。…分かった。サコソウは?大丈夫?」

「もちろん。じゃあ明日十時に港に待ち合わせしよう。フェリーが十時過ぎのがあるけん」