ガチャッて、玄関のドアが開く音がした。

基本的に、誰かが家に居る時は
鍵をかける習慣がない。
ド田舎であることに甘んじた平和ボケだけど、
小さい頃からそうだったからおかしいと思ったこともなかった。

なんなら真夏は玄関には鍵をかけても、
自分の部屋の窓は網戸にして、開けっぱなしにして平気で出掛けている。

そうしておくと夜には冷房をつけなくても十分冷えている。
山や川に囲まれている唯一の利点かもしれない。

今日なんて更に人が集まっているから
施錠なんかしていなかった。

それが当たり前だから鍵穴をガチャガチャされた気配もなかった。

っていうことは、お母さんか義父のどちらかだ。

「あんず…と、お友達?こんにちは」

「こんにちは、おばさん。お久しぶりです」

「琴音ちゃん。ごめんね、散らかっとって。あんず、友達が来るとやったらちょっとは片付けんね。恥ずかしか」

言っておくけど、片付けはちゃんとしている。
全然散らかってなんかいない。
あんたが居る時のほうがよっぽど散らかっとるやん、って思ったけれど
もちろん口にはしない。