空に還る。

じいちゃんちの前を通り過ぎて、坂を登って自分の家へと向かう。

「さっきのは?」

かのちゃんと初めましてのサコソウに訊かれて、
「親戚」って答えたら「っぽいな」って笑われた。

私とかのちゃんは全然似ていない。
あんなにおおらかで、スッキリした人間なんかじゃない。
どっちかっていうと、サコソウのほうがかのちゃんに似ているって思った。

「ただいまー」なんて、どれくらいぶりに音にしただろう。

言っても虚しいからいつからか心の中で呟くようになって、
それもいつの間にかやめていた。

「あんず。帰ったとね」

リビングから出てきたきっちゃんを見て、琴音とサコソウは顔を見合わせた。

今のきっちゃんを見ても、まだ半信半疑だろう。
私が貸した服を着ているだけの、ちょっと小さい男の子。
きっちゃんが私と違う部分は、今はどこにも見当たらない。

「こん子が貴市。きっちゃんって呼びよると」

「琴音です」

「颯馬ばい。よろしくな」

きっちゃんが生きていたら九十三歳。
人生の大先輩なのに、今は十三歳で、私達よりも年下だという異常現象。
当然、サコソウのほうがお兄さんらしかった。