空に還る。

きっちゃんは大きく作り過ぎた、梅干しのおにぎりを三つ食べて、
ウィンナーを齧って「世界一おいしい!」って瞳をキラキラさせた。
インスタントのお味噌汁には拍手まで贈ってくれて、
私はお腹を抱えていっぱい笑った。

この家に、最後に笑い声が聴こえた日がいつだったか、
私にはもう思い出せない。

それが頭をよぎるたびにちょっと泣きそうになったけれど、
無邪気なきっちゃんの言動が掻き消してくれる。

きっちゃん。
ずっとここにおってくれたらよかとに。

やけどそれは、きっちゃんにとっては呪いの言葉やね。
きっちゃんにとっての本当の愛は、ここには無かっちゃもんね。

あぁ、私。
ちゃんときっちゃんとさよならできるとかな。

今日出逢ったばっかりの、
時代を間違えてしまった命に、私の命を預けちゃいけないんだ。

そう強く言い聞かせるのに、
久しぶりに与えられたきっちゃんからのあたたかさが
私には眩し過ぎたから。