「あっち行こう」
「え?」
そのまま坂を下りて海まで行くとかなって思っとったけど、
きっちゃんは来た道を引き返していく。
何かを決意したみたいに、足取りは力強かった。
「あんず?」
太陽が眩しすぎるから俯いて歩いていた私の頭上を、人の影が遮った。
「かのちゃん…」
パタパタとうちわで仰ぎながら
かのちゃんは「暑かね」って空を見上げた。
「もう帰ったとね?」
「寝坊して行けんかったと」
「あんたは、もう…。黙祷はしたと?」
「ちゃんとした。かのちゃん、帰っとったと?」
「今さっきさ。病院もえらい混んどったばい。うちおるより冷房も涼しかしよかたい」
豪快に笑いながら、かのちゃんは私の隣で立ちすくむきっちゃんに視線を移して
「友達?」って言った。
「あーね…かのちゃん?こん子、しばらくうちに泊めてもよかかな?」
「はぁ?なんで?誰ね?」
「友達の弟。街の子さ。やけんここが珍しかって言うとばい。田舎町で暮らしてみたかって。うちやったらいいよってこん子の親も言いよるとばい」
「やけんってあんた…」
「困ったらかのちゃんち来るけんさ」
「大丈夫とね?」
「別に暇かし」
「危なかごとせんとよ?」
「はーい」
「え?」
そのまま坂を下りて海まで行くとかなって思っとったけど、
きっちゃんは来た道を引き返していく。
何かを決意したみたいに、足取りは力強かった。
「あんず?」
太陽が眩しすぎるから俯いて歩いていた私の頭上を、人の影が遮った。
「かのちゃん…」
パタパタとうちわで仰ぎながら
かのちゃんは「暑かね」って空を見上げた。
「もう帰ったとね?」
「寝坊して行けんかったと」
「あんたは、もう…。黙祷はしたと?」
「ちゃんとした。かのちゃん、帰っとったと?」
「今さっきさ。病院もえらい混んどったばい。うちおるより冷房も涼しかしよかたい」
豪快に笑いながら、かのちゃんは私の隣で立ちすくむきっちゃんに視線を移して
「友達?」って言った。
「あーね…かのちゃん?こん子、しばらくうちに泊めてもよかかな?」
「はぁ?なんで?誰ね?」
「友達の弟。街の子さ。やけんここが珍しかって言うとばい。田舎町で暮らしてみたかって。うちやったらいいよってこん子の親も言いよるとばい」
「やけんってあんた…」
「困ったらかのちゃんち来るけんさ」
「大丈夫とね?」
「別に暇かし」
「危なかごとせんとよ?」
「はーい」



