空に還る。

「海」

「ん?」

きっちゃんが部屋の窓から外を眺めている。

私の部屋の窓からは
目の前に海が広がっている。

ここから歩いて五分もしない所に海岸と船着場があるからだ。
今日はよく晴れていて、
太陽を溶かし込んだみたいな海がキラキラと反射している。

「あの海は変わらん」

「さすがにね。知っとる家、ある?」

「町の形もほとんど変わらんね。でも改築とかしとるっちゃろ。ピンとこん」

「そっかぁ。じゃ、近くまで行ってみよ」

玄関まで下りて、私はさっき履いていたビーチサンダルを。

きっちゃんの靴は黒で、ゴム製?
中敷みたいにして、新聞紙が敷いてある。

きっちゃんは全身がきれいに小麦色に焼けているけれど、
足首より下だけが白かった。
足首には歩くたびにゴム製の靴が擦れるからだろうか。
くっきりと線が刻まれている。

「なんで新聞紙?」

「汚れとるけん」

「あぁ…、靴下は?」

「そげんもん持っとらん」

「そっか。この靴、痛くない?ちょっと待って」

私は女子にしては身長が大きいけれど、
足は小さい。

きっちゃんは私より足は大きそうだった。

私が貸せるサイズの靴は無かったから、
私よりは足のサイズが大きい姉のビーチサンダルを靴箱から出した。

二十四センチ。
きっちゃんにもピッタリだった。