祖父母には言えない。
隠れない痣を見られることも怖いから、
すぐ下の祖父母の家にもあまり近寄らなくなった。
引きこもっていたわけじゃない。
登校はするし、琴音や友達とも遊びには出掛ける。
外に出て、祖父母と顔を合わせるたびに、
幸せそうに二人で庭いじりをしている顔を見ると、
あの幸福そうな微笑みを奪ってしまうことこそがこの世で一番の悪なんだと思うと、
自分の疵は絶対に隠さなければいけないと思った。
また、夕暮れにじいちゃんと一緒に散歩がしたい。
剥いてくれた枇杷の、あの甘い香りに包まれたい。
じいちゃんの膝に座って、意味の分からない新聞を眺めたい。
ばあちゃんが作ってくれるあったかい味噌汁が飲みたい。
冷たいね、ってお布団の中で握ってくれる、体温の高い、やわらかいばあちゃんの手の感触を、
私はもう、忘れてしまった。
隠れない痣を見られることも怖いから、
すぐ下の祖父母の家にもあまり近寄らなくなった。
引きこもっていたわけじゃない。
登校はするし、琴音や友達とも遊びには出掛ける。
外に出て、祖父母と顔を合わせるたびに、
幸せそうに二人で庭いじりをしている顔を見ると、
あの幸福そうな微笑みを奪ってしまうことこそがこの世で一番の悪なんだと思うと、
自分の疵は絶対に隠さなければいけないと思った。
また、夕暮れにじいちゃんと一緒に散歩がしたい。
剥いてくれた枇杷の、あの甘い香りに包まれたい。
じいちゃんの膝に座って、意味の分からない新聞を眺めたい。
ばあちゃんが作ってくれるあったかい味噌汁が飲みたい。
冷たいね、ってお布団の中で握ってくれる、体温の高い、やわらかいばあちゃんの手の感触を、
私はもう、忘れてしまった。



