空に還る。

「さっき、あんずがなんしよっても親は自分に興味ないみたいなこと言いよったろ。それはなんでね?」

自分の家族のことをきっちゃんに話すべきかどうか迷っていた。

話す必要は全然無いと思う。
きっちゃんがちゃんと元の時代に戻ることができれば、私の家族のことなんて関係ないんだから。

でもそれがいつになるかは分からない。
実際に親と出くわしたら、きっちゃんも困るだろうから。

「うちさ、ボロボロなんよ」

「ボロボロって?」

私は、きっちゃんに話した。
同級生にも、親友の琴音にだって細かくは話せなくて、
心のどこかでみんなが「当たり前」に、与えられた「普通」の家族の形に卑屈になってしまう感情も、
知られることが恥ずかしいと思っていた、自分の家族のことも。

なんでかは分からない。
やっぱり、きっちゃんに聞いて欲しかった。

それはきっちゃんが、本当はこの時間軸では生きていない子やからかもしれん。
何を話しても、どう思われても、
約束しているみたいにいつかはさよならがやって来る。

やけんこそ、私をどう思われても怖くはない。
ただ、今このわけの分からん状況で、心細くて不安なきっちゃんとだから、
(きず)を半分こできるかもって、甘えてしまったのかもしれん。