空に還る。

それからきっちゃんと、お互いに情報交換をした。

きっちゃんの家族は母、父、兄、姉、弟。

弟は四つ下で「みっちゃん」と呼んで可愛がっている。
他のきょうだい達とも仲はいいけれど、自分にとって下のきょうだいはみっちゃんだけだから、
余計に可愛がっているのだと言う。

姉は三つ上。
手先が器用で裁縫や編み物でなんでも作ってしまう。
近所の人からも重宝されて、「修理屋しーちゃん」って呼ばれているんだとか。
穏やかな人で、現存する仏様みたいな人らしい。

兄は七つ上で徴兵。
父は生まれつき手が不自由なことから徴兵は免れて、
小さい工場(こうば)で軽作業をしている。

家には「農家」とは呼べない程度の畑があって、
母が細々と作物を育てているけれどなんとか一日分の食料が収穫できるかどうか。

家計は厳しいみたい。

きっちゃんは毎日この町から
私が通っている学校がある町と同じ場所まで、
山を越えて通学している。

旧校舎の、古い古い写真が学校の掲示板に貼られている。
あれがきっと、きっちゃんが通っていた「国民学校」なんだ。

私はまだ、かのちゃんの親戚であること、
ばあちゃんの孫であることをきっちゃんには黙っていた。

好きな人が別の人と結婚して、
こうやって子孫を残しているなんてこと、
なんとなく言いにくかったんだ。