空に還る。

「帰る方法、探そうよ」

「どげんしてや…」

「そんなんすぐは分からんけどさ!ボーッとなんかしとれんやん。だってきっちゃん…」

「なん?」

「帰りたいんやろ?その…今、きっちゃんが生きていた世界は戦争中やん。知っとるばい。教科書でも、被災者の方の話も、じいちゃんやばあちゃんからもいっぱい聞いてきた。それにここ、長崎やしさ。余計にね。本当の苦しかことは経験しとらんけんなんも言えんけどさ。それでもきっちゃんは帰りたいとやろ?家族のところに」

「そうやね」

「やったら探さんばたい、帰り方ば」

「…一緒に探してくれると?」

「当たり前やろ。それまではうちにおったらよかさね」

「親は?」

「共働きってのもあるけど…ほとんど帰ってこん。私がなんしよったってどうでもよかっさ。やけん気にせんで?」

「なんでそこまでしてくれるん。初めて会ったとに。怖くなかと?」

自分でも不思議だった。
本来、私はこんなにポジティブでもなければ、バイタリティだって人の何倍も低い。
普段なら面倒事にはなるべく関わりたくない。

やのに、なんでやろ。
きっちゃんのこと、ほっといたらダメって思った。

なんでかは分からん。