空に還る。

「だって今は令和七年ばい。グローバルな時代なんやけん。外国語ば習いよる人も多かっちゃけん」

「ほんとや?そのレイワ…とかいう年号。昭和じゃなかとね」

「昭和の次に平成になるとよ。平らに成るって書いて平成。令和は、法令の令に、平和…そう、平和の和。昭和と一緒やね。でもこげんことそっちの時代で言ったらダメばい。それこそ頭のおかしかごと思われて…」

「どげんして言うとや。ここは昭和じゃなかっちゃろ。言う相手もおらん。帰る方法もなか。なんでこげんことに…」

タイムリープ。

つまり時間や時空を超えて、きっちゃんは二世代もの先の未来へと来てしまった。
空は果てしなく、どこまでも繋がっている、って言ったって限度があるやろ…。

きっちゃんの大きい瞳には絶望の色が浮かんでいる。

なんで時空を超えてしまったのかなんて分からない。
来た方法がわからないんだから、帰り方なんて分かりっこない。

「この時代の日本には戦争なんて恐ろしいものは無いよ。お洒落なお菓子もジュースも、あたたかいお布団もあるよ」なんて、
そんな言葉が慰めになるとも思えない。

だってここにはきっちゃんの家族が居ないんだから。

きっちゃんが自衛官のような服装、つまり国民服を着ている理由が分かった。
痩せた頬、小さい膝小僧にも合点がいって、少し切なくなった。