冗談なの?って訊こうとした言葉は声にはなってくれなかった。

だって、きっちゃんの目を見れば
それが冗談でも嘘でも、
ましてや夢なんかじゃないって分かるっちゃもん。

「タイムリープ…ってこと、やんね」

「あんずはすぐ横文字ば使うとね。気をつけんば。非国民で連れていかれるばい」

非国民。
その時代、国を売る売国奴やスパイ、
日本国民として倫理に背くような行動、つまり非国民だとレッテルを貼られてしまったら最後。
日常での生活は困難になる。

映画やドラマで観た光景だ。
当然、私がリアルで経験したわけじゃない。

登校日の講演でも、話してくれるのは時代背景と原爆投下の瞬間。
その一瞬あとからの地獄絵図だけ。

″非国民″という言葉が当時、どれだけ恐れられていたのか、
私にはまだよく分からない。

でも、きっちゃんが「気をつけろ」って言うくらいだ。
相当、良くはないのだろう。