空に還る。

「いらんならよかさ」

「飲む」

「もう。どれ?」

少年は詰め合わせの中からパインを選んだ。
私はアップルにした。

紙パックにくっ付いているストローを外して、
銀色の小さい穴にプスッとさす、その動作を少年はジッと眺めて、辿々しく真似をした。

「すっぱか」

「そがんことないやろ」

「慣れん」

「あはは。変なの。ねぇ、きみ名前は?ずっと″きみ″って呼ぶわけにはいかんやろ」

「キイチ」

「キイチ…?キイチって、」

「貴族の貴、市町村の市、貴市」

「貴市…いやそうじゃなくて……まぁいっか。じゃあ、きっちゃんでよかね」

「きっちゃん?」

「そのほうが呼びやすい」

「姉ちゃんは?」

「あんず。平仮名で」

「洒落た名前ばい」

「…きっちゃんって本当になんなん?おかしかことばっか。やっぱその服も浮いとるし」

「あんずのほうがよっぽどおかしかったい」

「いやいや。ってか何歳?」

「十三」

「中一ってこと?」

「チューイチ?国民学校たい。高等科一年」

「こく……高等科…?」

「あんずは?」

「十五やけど…」

「二つ上たい」

「そうやね。ねぇ、きっちゃん」

「なんね」