空に還る。

「ちょっと…!」

少年は迷うことなくたばこ屋の自宅部分に繋がっている玄関先に駆け込んで
「かの子っ!かの子!」って声を張り上げた。

「ちょーっと待ちなさいって!かのちゃんは今おらんよ!」

「かのちゃん?」

「かの子って、かのちゃんのことやろ?ここのおばちゃんやん。なんでかのちゃんば知っとると?しかも″かの子″って、きみ、私より年下やろ?なんで…」

「おばちゃんって誰のことや」

「はぁ?」

私の親戚だという事実は少年には言わなかった。
だってあまりにも怪し過ぎるし、警戒心が働いた。

かのちゃんは祖母の妹で、母の叔母にあたる人だ。

この家は実家の本家であり、
もうずっと昔からたばこ屋を営んでいる。

なんで少年がたばこ屋を、
かのちゃんのことを知っているのだろう。

しかも「かの子」って呼び捨てで。
明らかに私より年下だし、
かのちゃんとそんなにも親しいのなら、親戚である私がこの子のことを知らないはずがない。

少年はゆっくりとした足取りで玄関先から通りに出て、
「あれは?」って一軒の家を指さした。

「私のじいちゃんちやけど…」

「あげんもん…在るはず…」

「ねぇ、本当に大丈夫?熱中症かなんか?かのちゃんば知っとるってことは近所の子やったん?今はここには住んどらんよね?うち、誰もおらんけんちょっと休んでくね?」

「僕はずっとここにしか…!」