着替えを済ませたきっちゃんは、
ちょっと悲しいけれど、やっぱりきっちゃんらしかった。

「似合っとるね」

琴音が言って、サコソウが笑った。

「僕はまたハイカラか服ば着たかばい」

「行こっか」

「おう」

そう言えばきっちゃんは、私が遣う″横文字″に、あんなにも敏感なくせに、
自分は″ハイカラ″の″ヘビーユーザー″だ。

大丈夫だよ。きっちゃん。
世界はいつか必ず仲良しになれる。
どんな言葉を喋っても、何を食べても、
おいしいね、素敵だねって認め合える世界が必ず来るからね。

生きようね。

遠い空の下でも。
一緒だからね。

玄関で、靴箱にしまっていたきっちゃんのゴム製の靴を出した。

「きっちゃん、これ」

白い靴下を渡す。
きっちゃんは目を丸くして受け取った。

「僕に?」

「プレゼント」

ゆっくりと靴下を履いて、ゴム製の靴に足を通したきっちゃんは
震える声で「ふわふわやね」って微笑んだ。

みんなで神社に向かう途中、たばこ屋の前でかのちゃんに会った。

「またみんな来とったとね。雨降るって言いよったばい。濡れんごとせんば」

「うん。かのちゃん、きっちゃん今日帰るけん」

「そうね。また遊びこんね」

「…ありがとう。お元気で」

「あははは!おかしか子たい、大人びてから」

きっちゃんはかのちゃんに深く頭を下げてから歩き出した。
かのちゃんはきっちゃんの格好を見てもなんにも言わなかった。
ただ少し、懐かしむような表情をしていた。