空に還る。

「きっちゃん、聞いて。戦争は必ず終わる。終戦を迎えて、永く続く悲しみの中で日本ば復興させようって、未来の為に頑張ってくれると。傷ついた心ば癒す時間の必要かとに、あの時代の人達が未来の為に奮起してくれる。私達は必ずその想いば受け取って、どげん苦しかことのあっても必死に生きていくけん。きっちゃんは終戦ば迎える前に帰って、家族と一緒にその日ば迎えんばいけん」

終戦の日をきっちゃんには言わなかった。
だけど琴音とサコソウは、なんで私が今日にこだわっているのか理解してくれた。

「でもどうやって…」

「琴音…サコソウも。バカごた思うやろうけど聞いて。私は、もう…願うしかないと思っとる」

「願う?」

「きっちゃんは原爆の投下される瞬間、生きたいって願ったと。それでこっちに来てしまった。その強か想いとおんなじくらい、帰りたかって思っとる。その純度高い想いやったらきっと届くはずっちゃない?」

「ばり一か八かやけど…でも結局、一か八かしかなかけんね。俺は賛成」

「…私も。きっちゃんは?」

「僕はあんずば信じとるけん。やってみらんで否定はせん」

「ありがとう。みんな」

私達はそれぞれに深呼吸をして
顔を見合わせた。

「きっちゃん、これ」

預かっていた国民服を渡す。
洗濯はしているけれど染みついた汚れまでは落とせなかった。

「着替えてくっけん」

「うん」