そのまま、彼に寄りかかって甘えてみる。
聞こえてくる鼓動が、これを現実だと知らしめる。
「沙耶……」
それだけで、安心する。
この人は生きて、私の元へ帰ってきたんだと。
「……私、相馬のお嫁さんになれるかなぁ」
幸せになりたかった。
けど、その資格がないと思っていた。
綺麗なウエディングドレスを着て、大好きな人と笑いたかった幼い頃の夢は粉々に砕け散ったはずだった。
でも今、人生で心から初めて愛した人の腕の中で、私は幸運にも泣けている。それを許されている。
「相馬と、ずっと一緒にいたいなぁ……っ」
この人が背負っているものは、とても大きかった。
大きくて、怖くて、足が竦んだ。それでも、頑張った。
この人の目線で、世界を見たかったから。
「沙耶」
涙が溢れだして、止まらなくなって。
急に襲ってきた不安、頬に触れる相馬の手。
「─どんなに嫌がっても、今更逃げられんよ」
柔らかく、細められる瞳。
じゃれ合うように触れ合う唇。
彼の指は優しく、沙耶の項をなぞる。
「……っ」
「今更、お前は俺から逃げられないんだ」
─本で読んだ。番となった者の運命。
それは御園家の者へ、命を託すという意味。
身も心も、魂までも預けて、ただ真っ直ぐに相手を愛し、愛され、その大きな愛を受け止めることを求められる。
御園家のものからは、決して逃げられない。
何故なら、どんなに遠く離れても、番を結んだという証が居場所を知らせてしまうから。
「ずっと一緒にいるんだ。今更、手放せるわけないだろ。─愛してる。離れていた間、よく頑張ったな。愛しているよ、沙耶」
彼の首に腕を回して、愛を乞う。
(どうして……こんなにも寂しくて、泣きそうなの)
甘えるように唇を触れ合わせる。
沙耶は全然埋められることがない寂しさから逃れる為に、与えられる愛に溺れた。

