この恋は妄想じゃありません

「そーだね」



瀬名くんも同じことを考えていたみたいで珍しくそれ以上は軽いセリフは言わなかった。



「今なんの映画やってるんだっけ」



映画館に着くまではできるだけ他愛のない話をしてみたり、うまく会話を繋いでみたり。



とにかく瀬名くんにドキドキしないようにだけ気をつけた。



「何…見よっか」



集合場所から5分足らずで映画館につくと、今やっている映画が一目でわかった。



「…なんかちょうどいいのないね」



今やっている映画のレパートリーは悪くないものの、いい時間のものがなかなかない。



ちょうど良さそうな映画は次の上演までに2時間ほどある。



逆に、すぐ見れる映画は子供向けのキャラクター映画だったりあまり面白くないと噂のミステリー映画だったりだ。




「うーん、どうしよっか」



つまらない映画を見るんなら時間を待つほうがいいかなぁと考えていると瀬名くんが口を開いた。



「あれは?」



瀬名くんが指さした映画のポスターは1週間前に公開された恋愛映画だった。