この恋は妄想じゃありません

気持ちいいなぁ。



一瞬隣に瀬名くんがいることすら忘れてしまった。



すると黒い物体が私の目の前をよぎる。



「きゃっ!!虫!」



多分大きなハエかなんかなんだけど、虫が大の苦手な私からするとあれは恐怖でしかない。



気づけば私は大声を出してしまっていた。



虫って不規則に動き回るし、何より見た目気持ち悪いしほんと嫌い。



春だから虫がいっぱいいるのは仕方ないけど最悪だ。



キャーキャー言ってると、



「先輩うるさい」



といつものトーンの瀬名くんの声がする。



「しょうがないじゃん!!虫怖いんだもん」



虫のせいでもうなんとでもなりそうでそう叫ぶ。



「もう捕まえたから」



素手でシュッとハエを捕まえて、窓から離した。



今、何が…?



「先輩ビビりすぎ」



瀬名くんがいたずらっ子のようにケラケラと笑う。



春の日差しに金色の髪が輝いて私の瞳に映る。



よく見ると耳にはピアスも空いていた。