この恋は妄想じゃありません

「なんでこんな朝から1人で?」



瀬名くんに聞かれて、ため息が出そうになったけど寸前で抑えた。



私だってこんな暑いのに朝から練習なんてしたくない。



だけど、昨日あんなにダメだしされたら練習せずにはいられないってだけ。



「演技下手って言われたから練習してんの」



正直に話すと、



「疲れた顔してんね」



と言われた。



完全に他人事だ。



「疲れた」



昨日も夜遅くまで練習しちゃって寝不足だ。



夏休みだからたくさん寝たかったのに。



「よし、逃げよ」



すると瀬名くんは立ち上がって私の手を引いて走り出した。



え、ちょっと…!?



「俺も補習なんか行きたくないし」



廊下を全速力で走って、この間みたいに下駄箱も抜ける。



途中で瀬名くんは森先生に見つかって



「おい瀬名!逃げんな」



と追いかけられていた。



何が起こってんの?



子供みたいに健気に笑って、学校の外に出てもまだ彼は走ったままだ。



「瀬名くん早い!」


「元陸上部なんで」



普段家にこもってるから、こんなに走ることない。