この恋は妄想じゃありません

しばらく悩んだ後、夏川くんは口を開いた。



「…有村さん、シンデレラやらない?」



ぼーっとしていた私は自分の名前が呼ばれたとは気づかずに、みんなの視線が自分に向いたことでようやく気づいた。



「私?」



ち、ちょっと待って、タイム。



今、ほんとに私の名前が呼ばれた?



流れ的に絶対私は選ばれなくてシンデレラが似合うような可愛い女の子の名前が呼ばれると思っていた。



うんもすんも言えずにその場で固まる。



「いいじゃん、有村さん」


「美人だし夏川くんとお似合い」


「2人生徒会で仲良いもんねー」



クラスからそんなつぶやきが聞こえてきてもっと焦る。



今はたまたま肯定的な意見しか聞こえなかったけど、きっと嫌って思っている子もいるはず。



そもそも私がシンデレラの衣装が似合うとは思えない。



戸惑っていると、授業の終わりを告げるチャイムがなってしまった。



「有村さん、やってくれる?」



林田さんにそう言われる。