オフィスに入ると長谷部はめぐを椅子に促し、パソコンをテーブルに置いて映像のフォルダを開いた。
「お客様に許可をいただいて撮影した実際の披露宴の様子を、ダイジェストでまとめたものなんです。早速流しますね」
「はい」
めぐはわくわくと身を乗り出した。
ロマンチックに編集された動画は、ウエディングソングに乗って幸せいっぱいのカップルの写真が次々と流れる。
輝く笑顔の集合写真や幸せそうに見つめ合う二人、涙を拭う両親の写真など、どれもが感動的でめぐも胸を熱くした。
やがて実際の披露宴の様子が映し出される。
列席者の丸テーブルを回りながら、新郎が一輪ずつゲストから花を受け取っている。
「これはどういうシーンなんですか?」
めぐは長谷部を振り返って尋ねた。
「こちらはブーケセレモニーです。結婚式に参列出来なかったゲストの方が、新郎にお花を一輪ずつ渡します。それを集めてブーケにして、このあと入場する新婦にプロポーズをして差し出すんです」
「そうなんですね!」
長谷部の説明通り、新郎がメインテーブルの前まで来ると、後方の扉から新婦が入場してきた。
ゲストが拍手しながら見守る中、やがて新郎のもとへとたどり着く。
照明が絞られ、静まり返った会場に、ライトで照らされた新郎新婦の姿が浮かび上がった。
と、いきなり新郎は新婦の前で片膝をついてひざまずく。
ひゃっ!とめぐは口元に手をやって息を呑んだ。
「一生君だけを愛し続けます。どうか結婚してください」
新郎のプロポーズに、めぐは目を真ん丸にして固まる。
(ど、どうなるの?)
すると新婦は「はい。私もあなただけを愛し続けます」と言ってブーケを受け取り、そこから一輪抜き取ると新郎の胸に飾った。
BGMが大きくなり、二人はゲストの温かい拍手に包まれる。
めぐも思わず拍手をしながら長谷部を見上げた。
「とっても素敵ですね!」
至近距離で満面の笑みを浮かべるめぐにドキッとしてから、長谷部はふっと笑う。
「雪村さんは感情移入しやすいんですね」
「だってこんなに感動的なんですもの。実際にこの場にいたら絶対泣いちゃう」
「ははっ!じゃあ、雪村さんご自身の結婚式では号泣でしょうね」
「どうでしょう?そもそも結婚することが想像つかないですけど。あ、長谷部さん、これですか?ゴスペル!」
映像はいつの間にか別の披露宴へと変わっていた。
5人のゴスペルシンガーがアカペラでしっとりと「アメイジング グレイス」を聴かせたあと、ピアノの演奏に合わせてノリのいいゴスペルソングを歌い出す。
「わあ、盛り上がりますね!みんな手拍子でノリノリ。新郎新婦のお二人も楽しそう」
「ええ、この時は一気に会場内の熱気が増しましたよ。このカップルはしんみりした雰囲気になるのが苦手だとおっしゃっていたので、プランナーがゴスペルをご提案したんです」
「そうなんですね。いいですね、こういう堅苦しくない披露宴って」
「はい。お二人のご希望に合わせてオンリーワンの披露宴を創り上げようと、プランナー達は日々アイデアを練っています」
長谷部の言葉にめぐは感銘を受ける。
「そんなふうに親身になってもらえたら、お二人も嬉しいでしょうね。素敵だなあ、プランナーさん達。お仕事に対する姿勢が素晴らしいです。私も見習わなくちゃ」
真剣な表情で頷くめぐを、長谷部は優しく見つめる。
「雪村さんは外見の美しさだけではないんですよね。内側からも美しさが溢れてる」
小さく呟いた長谷部に、めぐは、ん?と首を傾げた。
「何かおっしゃいましたか?」
「いえ、ひとり言です。それよりそろそろ忘年会のお話をしましょうか」
「あっ、忘れてました」
めぐが改めて座り直すと、長谷部はパソコンを閉じてからめぐと向かい合って座った。
「お客様に許可をいただいて撮影した実際の披露宴の様子を、ダイジェストでまとめたものなんです。早速流しますね」
「はい」
めぐはわくわくと身を乗り出した。
ロマンチックに編集された動画は、ウエディングソングに乗って幸せいっぱいのカップルの写真が次々と流れる。
輝く笑顔の集合写真や幸せそうに見つめ合う二人、涙を拭う両親の写真など、どれもが感動的でめぐも胸を熱くした。
やがて実際の披露宴の様子が映し出される。
列席者の丸テーブルを回りながら、新郎が一輪ずつゲストから花を受け取っている。
「これはどういうシーンなんですか?」
めぐは長谷部を振り返って尋ねた。
「こちらはブーケセレモニーです。結婚式に参列出来なかったゲストの方が、新郎にお花を一輪ずつ渡します。それを集めてブーケにして、このあと入場する新婦にプロポーズをして差し出すんです」
「そうなんですね!」
長谷部の説明通り、新郎がメインテーブルの前まで来ると、後方の扉から新婦が入場してきた。
ゲストが拍手しながら見守る中、やがて新郎のもとへとたどり着く。
照明が絞られ、静まり返った会場に、ライトで照らされた新郎新婦の姿が浮かび上がった。
と、いきなり新郎は新婦の前で片膝をついてひざまずく。
ひゃっ!とめぐは口元に手をやって息を呑んだ。
「一生君だけを愛し続けます。どうか結婚してください」
新郎のプロポーズに、めぐは目を真ん丸にして固まる。
(ど、どうなるの?)
すると新婦は「はい。私もあなただけを愛し続けます」と言ってブーケを受け取り、そこから一輪抜き取ると新郎の胸に飾った。
BGMが大きくなり、二人はゲストの温かい拍手に包まれる。
めぐも思わず拍手をしながら長谷部を見上げた。
「とっても素敵ですね!」
至近距離で満面の笑みを浮かべるめぐにドキッとしてから、長谷部はふっと笑う。
「雪村さんは感情移入しやすいんですね」
「だってこんなに感動的なんですもの。実際にこの場にいたら絶対泣いちゃう」
「ははっ!じゃあ、雪村さんご自身の結婚式では号泣でしょうね」
「どうでしょう?そもそも結婚することが想像つかないですけど。あ、長谷部さん、これですか?ゴスペル!」
映像はいつの間にか別の披露宴へと変わっていた。
5人のゴスペルシンガーがアカペラでしっとりと「アメイジング グレイス」を聴かせたあと、ピアノの演奏に合わせてノリのいいゴスペルソングを歌い出す。
「わあ、盛り上がりますね!みんな手拍子でノリノリ。新郎新婦のお二人も楽しそう」
「ええ、この時は一気に会場内の熱気が増しましたよ。このカップルはしんみりした雰囲気になるのが苦手だとおっしゃっていたので、プランナーがゴスペルをご提案したんです」
「そうなんですね。いいですね、こういう堅苦しくない披露宴って」
「はい。お二人のご希望に合わせてオンリーワンの披露宴を創り上げようと、プランナー達は日々アイデアを練っています」
長谷部の言葉にめぐは感銘を受ける。
「そんなふうに親身になってもらえたら、お二人も嬉しいでしょうね。素敵だなあ、プランナーさん達。お仕事に対する姿勢が素晴らしいです。私も見習わなくちゃ」
真剣な表情で頷くめぐを、長谷部は優しく見つめる。
「雪村さんは外見の美しさだけではないんですよね。内側からも美しさが溢れてる」
小さく呟いた長谷部に、めぐは、ん?と首を傾げた。
「何かおっしゃいましたか?」
「いえ、ひとり言です。それよりそろそろ忘年会のお話をしましょうか」
「あっ、忘れてました」
めぐが改めて座り直すと、長谷部はパソコンを閉じてからめぐと向かい合って座った。



