ハロウィンが終わると、パークはクリスマスのデコレーションを始めた。
冬のイベントの詳細も明らかになり、めぐと弦は広告媒体に向けたPR記事の作成に追われ、合間に取材にも対応する。

「めぐ、急げ!あと3分しかない」
「待ってー。だってさ、あの記者さん、話が長いんだもん」

雑誌のインタビューが押してしまい、次のテレビ取材の待ち合わせ場所まで走って向かう。

「なんとかセーフ?」
「ああ」

息を切らしながら関係者入り口まで行くと、テレビクルーはまだ来ていなかった。

「ふう、良かった。私、コートも着ないまま走ってたよ」

めぐは手にしていた制服のロングコートを羽織る。
ボタンを留めていると、ふと弦が手を伸ばした。

「じっとしてて」

そう言ってめぐの前髪をサラリとなで、右側から左へと整える。

「ん、いつものめぐ」
「ありがとう」

顔を上げたままお礼を言うと、弦はめぐと視線を合わせてふっと微笑む。
めぐはドキッとして慌ててうつむいた。

(まただ。氷室くん、とにかく嬉しそうなんだよね)

友達同盟を結んでから、弦はいつも楽しそうにめぐに笑いかけるようになった。
告白の返事を保留にしていて申し訳ない、というめぐの気持ちを知ってか知らずか、まるでそんなことは気にしていないとばかりに常に明るく笑っている。

(返事を催促されないのは助かるけど、なんだか告白されたのが嘘みたい。氷室くん、もう私のこと好きじゃなくなったのかな?友達でいいやってこと?)

そんなことを考えていると、ガヤガヤとテレビクルーが姿を現す。
めぐは気持ちを入れ替えて、にこやかに笑顔で出迎えた。