そのあともパークの主要アトラクションに乗ったり、名物レストランでランチをしたりと撮影は順調に進む。
「めぐ、足大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「もしちょっとでも痛み出したらすぐに教えて」
「分かった」
カメラが止まったタイミングで、弦はめぐにそっと話しかける。
その時、ディレクターが近づいて来た。
「雪村さん、氷室さん。我々はこのあと夜のショーを取材して帰ります。本当はここでお二人とはお別れの予定でしたが、夜までおつき合い願えませんかねえ」
え?とめぐも弦も戸惑う。
「いやー、お二人にいてもらった方が視聴率的にもいいと思うんですよ。どうでしょう?お願い出来ませんか?」
めぐは、どうしようかと弦を振り仰いだ。
「上司に確認取らせていただけますでしょうか?」
「ああ、どうぞ」
「はい、すぐに戻ります」
弦はディレクターに会釈すると、めぐに目配せして近くのドアからバックヤードに入った。
「めぐ、足の具合も心配だからここで上がれ。俺一人で残るから」
「ううん、大丈夫。それに氷室くんだけが残るなんて不自然だもん」
「じゃあ二人で上がるか」
「それも会社的には……。とにかく一度課長に報告しよう」
「そうだな」
弦がスマートフォンで課長に連絡を入れると「出来れば引き受けて欲しいけど、拘束時間も長くなるから二人に任せる」と返事がきた。
「どうしようか……」
「私なら大丈夫だよ」
「でも、今は平気でもだんだん痛み出すかもしれない」
「それなら、夜のショーまでは一旦離脱させてもらう?あとで合流する感じで」
「ああ、そうだな。ちょっとディレクターさんと話してくるよ」
ドアを開けて出て行った弦は、しばらくすると再びバックヤードに戻って来た。
「一旦離脱でOKだって。その間、アトラクションを乗りまくって撮影するらしい。環奈がクルーにつき添ってくれることになった。俺達は夜のショーまでは休憩しよう」
「そう、ありがとう」
二人で休憩室に向かい、長椅子に並んで腰掛ける。
「めぐ、靴脱いでろ。ヒールあるだろ?足に良くない」
「うん、そうだね」
めぐはパンプスから足を抜き、そっと踵だけを載せた。
弦は壁際のテーブルでコーヒーを淹れると、めぐに手渡す。
「はい、ミルク多めのコーヒー」
「ありがとう」
ひと口飲んで、美味しさにホッとする。
(氷室くん、私の好みとか何でも知ってるんだな)
コーヒーには砂糖を入れずにミルクをたっぷり入れること。
高級レストランより居酒屋の方が好きなこと。
ブランド物には興味がないこと。
(……ブルースターのネックレスが宝物だったことも?)
そう思った途端、胸がギュッと苦しくなった。
「めぐ……?」
隣から弦が心配そうに声をかけてくる。
「あ、ごめんね。何でもないよ。足も痛くないから、大丈夫。それより夜のショーまで2時間もあるよ。一度事務所に戻る?」
「んー、事務所まで歩くの大変じゃないか?それにお腹減ってるだろ?俺、パークで適当に食べ物買って来るよ。めぐはここで待ってろ」
そういうと弦は立ち上がり、制服のジャケット脱いでソファに置いてから休憩室を出て行った。
「めぐ、足大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「もしちょっとでも痛み出したらすぐに教えて」
「分かった」
カメラが止まったタイミングで、弦はめぐにそっと話しかける。
その時、ディレクターが近づいて来た。
「雪村さん、氷室さん。我々はこのあと夜のショーを取材して帰ります。本当はここでお二人とはお別れの予定でしたが、夜までおつき合い願えませんかねえ」
え?とめぐも弦も戸惑う。
「いやー、お二人にいてもらった方が視聴率的にもいいと思うんですよ。どうでしょう?お願い出来ませんか?」
めぐは、どうしようかと弦を振り仰いだ。
「上司に確認取らせていただけますでしょうか?」
「ああ、どうぞ」
「はい、すぐに戻ります」
弦はディレクターに会釈すると、めぐに目配せして近くのドアからバックヤードに入った。
「めぐ、足の具合も心配だからここで上がれ。俺一人で残るから」
「ううん、大丈夫。それに氷室くんだけが残るなんて不自然だもん」
「じゃあ二人で上がるか」
「それも会社的には……。とにかく一度課長に報告しよう」
「そうだな」
弦がスマートフォンで課長に連絡を入れると「出来れば引き受けて欲しいけど、拘束時間も長くなるから二人に任せる」と返事がきた。
「どうしようか……」
「私なら大丈夫だよ」
「でも、今は平気でもだんだん痛み出すかもしれない」
「それなら、夜のショーまでは一旦離脱させてもらう?あとで合流する感じで」
「ああ、そうだな。ちょっとディレクターさんと話してくるよ」
ドアを開けて出て行った弦は、しばらくすると再びバックヤードに戻って来た。
「一旦離脱でOKだって。その間、アトラクションを乗りまくって撮影するらしい。環奈がクルーにつき添ってくれることになった。俺達は夜のショーまでは休憩しよう」
「そう、ありがとう」
二人で休憩室に向かい、長椅子に並んで腰掛ける。
「めぐ、靴脱いでろ。ヒールあるだろ?足に良くない」
「うん、そうだね」
めぐはパンプスから足を抜き、そっと踵だけを載せた。
弦は壁際のテーブルでコーヒーを淹れると、めぐに手渡す。
「はい、ミルク多めのコーヒー」
「ありがとう」
ひと口飲んで、美味しさにホッとする。
(氷室くん、私の好みとか何でも知ってるんだな)
コーヒーには砂糖を入れずにミルクをたっぷり入れること。
高級レストランより居酒屋の方が好きなこと。
ブランド物には興味がないこと。
(……ブルースターのネックレスが宝物だったことも?)
そう思った途端、胸がギュッと苦しくなった。
「めぐ……?」
隣から弦が心配そうに声をかけてくる。
「あ、ごめんね。何でもないよ。足も痛くないから、大丈夫。それより夜のショーまで2時間もあるよ。一度事務所に戻る?」
「んー、事務所まで歩くの大変じゃないか?それにお腹減ってるだろ?俺、パークで適当に食べ物買って来るよ。めぐはここで待ってろ」
そういうと弦は立ち上がり、制服のジャケット脱いでソファに置いてから休憩室を出て行った。



