「環奈ちゃん、ハロウィンのデコレーションの写真を撮りに行きたいんだけど。パークのどこが一番見どころかな?」
いつもなら弦に尋ねるセリフを、めぐはいつのまにか環奈に聞くようになっていた。
「それならやっぱりヨーロッパエリアですよ。ハロウィンはアイルランドのケルト人のお祭り『サウィン』が起源ですからね」
「そうなんだ!知らなかった。じゃあアイルランドのエリアを撮影してくるね」
そう言って立ち上がると、「私もお供します」と環奈もついて来た。
「ありがとね、環奈ちゃん」
「いいえー。私、今までずっと雪村さんとこうやってお話ししたかったんです。だから楽しくて」
「ふふっ、そっか。私も最近は環奈ちゃんとたくさんおしゃべり出来て嬉しい」
「女子トーク、最高ですよねー」
「うん、そうだね」
所々に飾られたハロウィンのデコレーションを撮影しつつ、アイルランドエリアを目指す。
そこには大きなフォトブースとハロウィンを紹介するパネルが設けられていた。
「へえ、ハロウィンって死者の魂がお墓から蘇って家族に会いに来る日なんだね。日本で言う『お盆』と同じだね」
「ジャック・オ・ランタンも、最初はかぼちゃじゃなくてかぶだったんですって」
紹介パネルを読みながら、二人でふむふむと頷く。
「雪村さん、アイルランドのカフェで『バームブラック』っていうドライフルーツのケーキが食べられるみたいですよ。フォーチュンクッキーみたいに、中から何が出てくるかでその人の運勢を占うんですって」
「面白そう!記事にもしたいから、行ってみようか」
「はい!」
二人でアイルランドの伝統の食事が楽しめるカフェに入る。
「ハッピーハロウィン!」
店員の女性が明るく声をかけてきた。
「ここは一足早くハロウィンムードいっぱいなんですね」
環奈が店内の飾りを見渡しながら言うと、女性スタッフは頷く。
「ええ、アイルランドはハロウィンの本場ですからね。まだ9月ですけど既に盛り上がってますよ」
「じゃあ、バームブラックもいただけますか?」
「もちろん!すぐにご用意しますので、お掛けになってお待ちください」
めぐと環奈が窓際の二人席で待っていると、スタッフは大きなプレートに載せたパウンドケーキを運んで来た。
「お待たせしました。こちらがアイルランドでハロウィンに食べられている『バームブラック』です。スパイスと紅茶、レーズンが入っているのですが、他にもいくつかアイテムが入っています。出て来たら私に教えてくださいね。意味をお伝えしますから」
「はい!わー、楽しみ」
環奈と顔を見合わせて、めぐはわくわくと身を乗り出す。
「既に切り分けてありますので、どれがいいか選んでくださいね」
「じゃあ、私は真ん中のこれにします」
環奈がケーキのちょうど中央の一片を指差し、スタッフはトングで掴んで環奈の前のお皿に載せた。
「雪村さんはどれにします?」
「えー、迷っちゃう。えっと、じゃあ一番右端のこれ!」
「端っこ?なんか意外」
「そう?変かな。でも、うん。これにします」
スタッフは頷いてめぐのお皿に右端の一片を載せた。
「それではどうぞお楽しみください」
お辞儀をしてスタッフが去ると、めぐと環奈は真剣な表情でフォークを手にする。
「ではいきますよ。ケーキ、入刀ー!」
環奈が高らかに言ってケーキの真ん中にフォークを入れた。
「あ、なんかある!なんだろう?金貨みたい」
「えー、ほんとだ。私はなんだろう」
めぐも真ん中にフォークを入れてみる。
何かに当たる手ごたえがあって、そっと切り分けてみた。
「ん?何かな。これって、指輪かな」
するとスタッフが笑顔で歩み寄って来た。
「お二人とも出ましたか?では占いの結果をお伝えします。まず硬貨が出た方は、金運が上がります」
「え、やったー!」と環奈が手を挙げて喜ぶ。
「そして指輪が出た方は、結婚出来ます」
……は?とめぐは固まる。
いやいや、それは今の自分に一番遠いワードではないかと思っていると、環奈が嬉しそうに話しかけてきた。
「やりましたね!雪村さん。新しい恋人が出来たら一気に結婚ですよ、きっと」
「それはどうかな。まあ、占いだもんね。うん、楽しかったです。環奈ちゃんは金運アップか、いいね!」
「私は結婚運の方がよかったけどなあ。じゃあ、当たるかどうかは今後のお楽しみってことで」
「そうね。じゃあケーキいただこうか。あ!取材用の写真撮るの、すっかり忘れてた!」
スタッフが笑って、再び大きなプレートを運んで来てくれる。
「どうぞ、ごゆっくり撮影してください。紹介していただければ私達も嬉しいです」
「はい、がんばっていい記事を書きますね」
めぐと環奈は写真を撮り、どんな文章にしようかと話しながら美味しいケーキを味わった。
いつもなら弦に尋ねるセリフを、めぐはいつのまにか環奈に聞くようになっていた。
「それならやっぱりヨーロッパエリアですよ。ハロウィンはアイルランドのケルト人のお祭り『サウィン』が起源ですからね」
「そうなんだ!知らなかった。じゃあアイルランドのエリアを撮影してくるね」
そう言って立ち上がると、「私もお供します」と環奈もついて来た。
「ありがとね、環奈ちゃん」
「いいえー。私、今までずっと雪村さんとこうやってお話ししたかったんです。だから楽しくて」
「ふふっ、そっか。私も最近は環奈ちゃんとたくさんおしゃべり出来て嬉しい」
「女子トーク、最高ですよねー」
「うん、そうだね」
所々に飾られたハロウィンのデコレーションを撮影しつつ、アイルランドエリアを目指す。
そこには大きなフォトブースとハロウィンを紹介するパネルが設けられていた。
「へえ、ハロウィンって死者の魂がお墓から蘇って家族に会いに来る日なんだね。日本で言う『お盆』と同じだね」
「ジャック・オ・ランタンも、最初はかぼちゃじゃなくてかぶだったんですって」
紹介パネルを読みながら、二人でふむふむと頷く。
「雪村さん、アイルランドのカフェで『バームブラック』っていうドライフルーツのケーキが食べられるみたいですよ。フォーチュンクッキーみたいに、中から何が出てくるかでその人の運勢を占うんですって」
「面白そう!記事にもしたいから、行ってみようか」
「はい!」
二人でアイルランドの伝統の食事が楽しめるカフェに入る。
「ハッピーハロウィン!」
店員の女性が明るく声をかけてきた。
「ここは一足早くハロウィンムードいっぱいなんですね」
環奈が店内の飾りを見渡しながら言うと、女性スタッフは頷く。
「ええ、アイルランドはハロウィンの本場ですからね。まだ9月ですけど既に盛り上がってますよ」
「じゃあ、バームブラックもいただけますか?」
「もちろん!すぐにご用意しますので、お掛けになってお待ちください」
めぐと環奈が窓際の二人席で待っていると、スタッフは大きなプレートに載せたパウンドケーキを運んで来た。
「お待たせしました。こちらがアイルランドでハロウィンに食べられている『バームブラック』です。スパイスと紅茶、レーズンが入っているのですが、他にもいくつかアイテムが入っています。出て来たら私に教えてくださいね。意味をお伝えしますから」
「はい!わー、楽しみ」
環奈と顔を見合わせて、めぐはわくわくと身を乗り出す。
「既に切り分けてありますので、どれがいいか選んでくださいね」
「じゃあ、私は真ん中のこれにします」
環奈がケーキのちょうど中央の一片を指差し、スタッフはトングで掴んで環奈の前のお皿に載せた。
「雪村さんはどれにします?」
「えー、迷っちゃう。えっと、じゃあ一番右端のこれ!」
「端っこ?なんか意外」
「そう?変かな。でも、うん。これにします」
スタッフは頷いてめぐのお皿に右端の一片を載せた。
「それではどうぞお楽しみください」
お辞儀をしてスタッフが去ると、めぐと環奈は真剣な表情でフォークを手にする。
「ではいきますよ。ケーキ、入刀ー!」
環奈が高らかに言ってケーキの真ん中にフォークを入れた。
「あ、なんかある!なんだろう?金貨みたい」
「えー、ほんとだ。私はなんだろう」
めぐも真ん中にフォークを入れてみる。
何かに当たる手ごたえがあって、そっと切り分けてみた。
「ん?何かな。これって、指輪かな」
するとスタッフが笑顔で歩み寄って来た。
「お二人とも出ましたか?では占いの結果をお伝えします。まず硬貨が出た方は、金運が上がります」
「え、やったー!」と環奈が手を挙げて喜ぶ。
「そして指輪が出た方は、結婚出来ます」
……は?とめぐは固まる。
いやいや、それは今の自分に一番遠いワードではないかと思っていると、環奈が嬉しそうに話しかけてきた。
「やりましたね!雪村さん。新しい恋人が出来たら一気に結婚ですよ、きっと」
「それはどうかな。まあ、占いだもんね。うん、楽しかったです。環奈ちゃんは金運アップか、いいね!」
「私は結婚運の方がよかったけどなあ。じゃあ、当たるかどうかは今後のお楽しみってことで」
「そうね。じゃあケーキいただこうか。あ!取材用の写真撮るの、すっかり忘れてた!」
スタッフが笑って、再び大きなプレートを運んで来てくれる。
「どうぞ、ごゆっくり撮影してください。紹介していただければ私達も嬉しいです」
「はい、がんばっていい記事を書きますね」
めぐと環奈は写真を撮り、どんな文章にしようかと話しながら美味しいケーキを味わった。



