翌朝。
めぐはすっきりとした顔でフロントに現れる。
「長谷部さん、夕べは本当にありがとうございました」
「どういたしまして。ゆっくりお休みになれましたか?」
「はい、気持ちも身体も元気になりました」
「それは良かった。そのお花、雪村さんのお仕事中はここでお預かりして水揚げしておきますよ」
長谷部は、めぐが手にしている25本のバラの花束に目をやってそう言う。
「え、いいんですか?」
「はい。勤務が終わる頃にお届けに上がりますね」
「いえ、そんな。私がこちらに取りに伺います。時間も読めませんから」
「承知しました。お待ちしております」
めぐはお礼を言って長谷部に花束を託した。
「ではチェックアウトをお願いします」
そう言ってめぐが財布を取り出すと、長谷部は軽く首を振って微笑んだ。
「お支払いは結構です」
「え、なぜですか?」
「ささやかながら、私からの日頃の感謝の気持ちとしてお受け取りください」
「え?いえいえ、全然ささやかな金額ではないですよね?」
「ささやかですよ。雪村さんにはドレスモデルの件でも大変お世話になっていますから。カタログも好評で、いつか改めてお礼をしたいと思っていました」
「でも、まさかそんな……」
数万円もする宿泊代にシャンパンに食事、しかもバラの花束ももらっているのだ。
そんな大きな額を長谷部に負担してもらう訳にはいかない。
だが長谷部も譲らなかった。
「本当に結構ですから。雪村さん、お仕事に遅れますよ。それにほら、後ろにチェックアウトのお客様も並ばれていますし」
「あ!すみません」
めぐは振り返って慌てて頭を下げる。
「では、あの。取り敢えずこの場は失礼いたします」
「はい。ご利用いただき誠にありがとうございました」
また後ほど、と長谷部に断ってめぐはホテルをあとにした。
めぐはすっきりとした顔でフロントに現れる。
「長谷部さん、夕べは本当にありがとうございました」
「どういたしまして。ゆっくりお休みになれましたか?」
「はい、気持ちも身体も元気になりました」
「それは良かった。そのお花、雪村さんのお仕事中はここでお預かりして水揚げしておきますよ」
長谷部は、めぐが手にしている25本のバラの花束に目をやってそう言う。
「え、いいんですか?」
「はい。勤務が終わる頃にお届けに上がりますね」
「いえ、そんな。私がこちらに取りに伺います。時間も読めませんから」
「承知しました。お待ちしております」
めぐはお礼を言って長谷部に花束を託した。
「ではチェックアウトをお願いします」
そう言ってめぐが財布を取り出すと、長谷部は軽く首を振って微笑んだ。
「お支払いは結構です」
「え、なぜですか?」
「ささやかながら、私からの日頃の感謝の気持ちとしてお受け取りください」
「え?いえいえ、全然ささやかな金額ではないですよね?」
「ささやかですよ。雪村さんにはドレスモデルの件でも大変お世話になっていますから。カタログも好評で、いつか改めてお礼をしたいと思っていました」
「でも、まさかそんな……」
数万円もする宿泊代にシャンパンに食事、しかもバラの花束ももらっているのだ。
そんな大きな額を長谷部に負担してもらう訳にはいかない。
だが長谷部も譲らなかった。
「本当に結構ですから。雪村さん、お仕事に遅れますよ。それにほら、後ろにチェックアウトのお客様も並ばれていますし」
「あ!すみません」
めぐは振り返って慌てて頭を下げる。
「では、あの。取り敢えずこの場は失礼いたします」
「はい。ご利用いただき誠にありがとうございました」
また後ほど、と長谷部に断ってめぐはホテルをあとにした。



