しばらく冷やしてから「これくらいでいいかな?」と長谷部はタオルを外した。

「うん、だいぶ腫れも引きましたね。これなら大丈夫そうだ」
「ありがとうございました、長谷部さん」
「どういたしまして。今、お花も飾りますね」

立ち上がると長谷部はバラと一緒に持って来ていた花瓶に生ける。
めぐはその様子を見守った。

「とっても綺麗……。何本あるんですか?」
「25本です」
「そんなにあるんですね。でも12本でも108本でもないから、本数の意味はないんですよね?」

すると花を整えていた手を止めて、長谷部は振り返る。

「ありますよ。25本の赤いバラを贈る意味」
「えっ、そうなんですか?なんて意味なんですか?」
「それは内緒です」
「えー、気になります。教えてください」
「いいえ、教えません」

頑なな長谷部にめぐはふくれっ面になる。
が、ふと思いついてスマートフォンを手に取った。
めぐの意図に気づいた長谷部が、慌てて止める。

「雪村さん!検索しちゃだめです」

だがひと足早く、めぐは答えを知る。
25本の赤いバラの花束の意味は……

『あなたの幸せを祈っています』

目にした途端、またしてもめぐの瞳が涙で潤む。

「え、ちょっと、雪村さん?大丈夫ですか?」

心配そうに焦り出す長谷部に、めぐは泣きながら笑ってみせた。

「ふふっ、やっぱり長谷部さんはロマンチストです」
「そうかな、ごめん。ちょっとキザだったな」
「いえ、嬉しいです」

目に涙をいっぱい溜めながら嬉しそうに微笑むめぐに、長谷部は切なさを感じながらも頷いた。