「雪村さん、あの、ずっと前からいいなって思ってて。よかったら食事でも行きませんか?」
お昼休みの社員食堂で、めぐは環奈と一緒にランチを食べていた。
だがその合間にこうやって何度も声をかけられる。
「すみません。ご期待に沿えなくて」
「じゃあ、せめて連絡先だけでも……」
「それもごめんなさい。食事に戻ってもいいですか?」
「はい、すみません」
すごすごと去って行く男性の後ろ姿を見ながら、環奈が「5人目」と呟く。
「すごいですね、次から次へと」
「ごめんね、環奈ちゃん。落ち着いて食べられなくて。いつもはこんなことないのに、今日はどうしたんだろう?」
「それはまあ、雪村さんが氷室さんと別れたからですね。あっという間に噂が広まったんだと思いますよ。氷室さんも、今日は色んな女子に声をかけられてるみたいですから」
「ああ、なるほど」
朝、環奈に話していたつもりが周りもシンと静まり返り、皆が耳を傾けていたことを思い出す。
(今までは氷室くんに守られてたんだな、私。でもこれ以上お世話になる訳にはいかない。氷室くんがやっと好きな人を見つけられたんだもん。上手くいくように応援したい。邪魔にならないようにしなきゃ)
そう思い、めぐは出来るだけ弦を避けるようになった。
仕事上の必要な会話しかしない。
それもこれまでのような軽い口調は封印し、あくまでも淡々と話すだけ。
仕事の合間に何人もの男性に「お食事でも」と声をかけられるが、ごめんなさいと断り続ける。
そんな毎日にいつしかめぐから笑顔が消え、表情も暗くなる。
弦は隣の席から横目でめぐの様子をうかがい、デスクの下で拳を握りしめた。
なんとかしたい。
こんなめぐは見たくない。
けれどそうさせたのは自分で、あの時はそうするしかなかったのだ。
めぐが素敵な恋愛を出来るように。
ただその想いだったのに……。
今さら引き返せない。
めぐが、声をかけてくる男性に少しでも気持ちを向けてくれるのを待つしかない。
弦は唇を引き結んでグッと自分の感情を押し殺した。
お昼休みの社員食堂で、めぐは環奈と一緒にランチを食べていた。
だがその合間にこうやって何度も声をかけられる。
「すみません。ご期待に沿えなくて」
「じゃあ、せめて連絡先だけでも……」
「それもごめんなさい。食事に戻ってもいいですか?」
「はい、すみません」
すごすごと去って行く男性の後ろ姿を見ながら、環奈が「5人目」と呟く。
「すごいですね、次から次へと」
「ごめんね、環奈ちゃん。落ち着いて食べられなくて。いつもはこんなことないのに、今日はどうしたんだろう?」
「それはまあ、雪村さんが氷室さんと別れたからですね。あっという間に噂が広まったんだと思いますよ。氷室さんも、今日は色んな女子に声をかけられてるみたいですから」
「ああ、なるほど」
朝、環奈に話していたつもりが周りもシンと静まり返り、皆が耳を傾けていたことを思い出す。
(今までは氷室くんに守られてたんだな、私。でもこれ以上お世話になる訳にはいかない。氷室くんがやっと好きな人を見つけられたんだもん。上手くいくように応援したい。邪魔にならないようにしなきゃ)
そう思い、めぐは出来るだけ弦を避けるようになった。
仕事上の必要な会話しかしない。
それもこれまでのような軽い口調は封印し、あくまでも淡々と話すだけ。
仕事の合間に何人もの男性に「お食事でも」と声をかけられるが、ごめんなさいと断り続ける。
そんな毎日にいつしかめぐから笑顔が消え、表情も暗くなる。
弦は隣の席から横目でめぐの様子をうかがい、デスクの下で拳を握りしめた。
なんとかしたい。
こんなめぐは見たくない。
けれどそうさせたのは自分で、あの時はそうするしかなかったのだ。
めぐが素敵な恋愛を出来るように。
ただその想いだったのに……。
今さら引き返せない。
めぐが、声をかけてくる男性に少しでも気持ちを向けてくれるのを待つしかない。
弦は唇を引き結んでグッと自分の感情を押し殺した。



