「おはようございまーす」

次の日、いつものように元気に出社して来た環奈に、めぐと弦も「おはよう」と顔を上げる。

「氷室さん、雪村さんと素敵なバースデーを過ごせましたか?」

なにげなくそう言う環奈に、めぐが口を開いた。

「環奈ちゃん、実は私達別れたの」

えっ!と環奈は驚いたまま固まる。

「私と氷室くんはこれからは単なる同僚だから、よろしくね。って、あれ?」

環奈に話していたはずだが、他の社員もピタリと動きを止めてこちらを見ているのに気づき、めぐはキョトンとする。

「あの、皆さんどうかしましたか?」

見渡しながら声をかけると、皆一様に「ああ、別に」と視線を落とした。

なんだろう?と首をひねっていると、環奈が目を潤ませてめぐと弦を交互に見る。

「私、寂しいです。雪村さんと氷室さんはとってもお似合いのカップルで、私の憧れだったから」
「そう、ありがとう環奈ちゃん。これからも変わらず仲良くしてくれると嬉しい」
「それはもちろんです!でも、悲しくて……。ごめんなさい。私が泣いていい立場じゃないですよね」
「ううん、そんなことない。ごめんね、悲しませて」
「謝らないでください。私の方こそごめんなさい。雪村さんを励ましたいのに、どうしても涙が……」

めぐは手を伸ばして環奈の頭をポンポンとなでる。
恋人同士だと嘘をついていたことが心苦しくなった。

「ありがとう。じゃあ、ランチ一緒につき合ってくれる?」
「はい!もちろん」
「楽しみにしてる。さて、仕事しようか」

明るく振る舞うめぐに、隣の席で弦はギュッと眉根を寄せながら唇を噛みしめていた。