「それでは、今日もお疲れ様。乾杯!」
ビールで乾杯すると、めぐはお気に入りの品を次々と注文した。
「ホッケの塩焼きと明太子入り卵焼き、つくね串とねぎ焼きと味噌田楽、あとは……」
「めぐ、あのさ。俺の前ではいいけど他の男の前ではちょっと控えろよ」
「え?なにを?」
「その食欲全開パワーで見境なくオーダーするの」
「別に他の男の人と食事に行かないからいいじゃない」
すると弦はジョッキをテーブルに置き、真剣な顔で切り出した。
「めぐ。俺、好きな人が出来た」
え……と驚いためぐは、みるみるうちに意気消沈した。
「そ、そっか。そうなんだね、おめでとう!」
「いや、まだつき合ってない。気になる相手が出来たってだけ」
「ああ、なるほど。でも氷室くんに告白されたら、きっとお相手の人も喜んでOKするよ」
「どうだろ?そんなに上手くいくとは思えないけどな」
「大丈夫だよ。上手くいくように私も願ってるね」
「ありがとう。そういう訳で『恋人同盟』はおしまいだ」
めぐはハッとした表情を浮かべてから小さく頷く。
「うん、そうだよね。今まで本当にありがとう、氷室くん。これからは単なる同僚としてよろしくね」
「こちらこそ。じゃあ、めぐ。そのブルースターのネックレス、預かる」
え!とめぐは目を見開いた。
思わず隠すように、両手で胸元のネックレスに手をやる。
「あの、これを?」
「ああ、返してほしい」
「そ、そうだよね。彼女はいい気がしないもんね。分かった」
自分に言い聞かせると、めぐは両手を首の後ろに回す。
外そうとすると、かすかに手が震えた。
「ごめん、待ってね。すぐ外すから」
必死に気持ちを落ち着かせながら、震える手でなんとか留め具を外した。
スルッと首元を滑ったネックレスを右手で握りしめると、めぐはゆっくりと弦に差し出す。
「はい、これ」
「ああ」
受け取ろうと手を伸ばした弦は、めぐの手を思わず握りしめた。
「めぐ?大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
サラリと弦の手のひらにネックレスを載せて、めぐは無理やり笑ってみせる。
「氷室くんが処分してね」
「……分かった」
「じゃあ、食べたらすぐ解散にしよう。辻褄合わせの会も今日でおしまいね」
「そうだな」
テーブルに並ぶ料理を、めぐは急いで食べる。
美味しいはずなのに何も味がしない。
気を抜けば涙がこぼれそうで、めぐは黙々と食べていた。
ビールで乾杯すると、めぐはお気に入りの品を次々と注文した。
「ホッケの塩焼きと明太子入り卵焼き、つくね串とねぎ焼きと味噌田楽、あとは……」
「めぐ、あのさ。俺の前ではいいけど他の男の前ではちょっと控えろよ」
「え?なにを?」
「その食欲全開パワーで見境なくオーダーするの」
「別に他の男の人と食事に行かないからいいじゃない」
すると弦はジョッキをテーブルに置き、真剣な顔で切り出した。
「めぐ。俺、好きな人が出来た」
え……と驚いためぐは、みるみるうちに意気消沈した。
「そ、そっか。そうなんだね、おめでとう!」
「いや、まだつき合ってない。気になる相手が出来たってだけ」
「ああ、なるほど。でも氷室くんに告白されたら、きっとお相手の人も喜んでOKするよ」
「どうだろ?そんなに上手くいくとは思えないけどな」
「大丈夫だよ。上手くいくように私も願ってるね」
「ありがとう。そういう訳で『恋人同盟』はおしまいだ」
めぐはハッとした表情を浮かべてから小さく頷く。
「うん、そうだよね。今まで本当にありがとう、氷室くん。これからは単なる同僚としてよろしくね」
「こちらこそ。じゃあ、めぐ。そのブルースターのネックレス、預かる」
え!とめぐは目を見開いた。
思わず隠すように、両手で胸元のネックレスに手をやる。
「あの、これを?」
「ああ、返してほしい」
「そ、そうだよね。彼女はいい気がしないもんね。分かった」
自分に言い聞かせると、めぐは両手を首の後ろに回す。
外そうとすると、かすかに手が震えた。
「ごめん、待ってね。すぐ外すから」
必死に気持ちを落ち着かせながら、震える手でなんとか留め具を外した。
スルッと首元を滑ったネックレスを右手で握りしめると、めぐはゆっくりと弦に差し出す。
「はい、これ」
「ああ」
受け取ろうと手を伸ばした弦は、めぐの手を思わず握りしめた。
「めぐ?大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
サラリと弦の手のひらにネックレスを載せて、めぐは無理やり笑ってみせる。
「氷室くんが処分してね」
「……分かった」
「じゃあ、食べたらすぐ解散にしよう。辻褄合わせの会も今日でおしまいね」
「そうだな」
テーブルに並ぶ料理を、めぐは急いで食べる。
美味しいはずなのに何も味がしない。
気を抜けば涙がこぼれそうで、めぐは黙々と食べていた。



