「……めぐ?大丈夫か?」
ぼんやりとした視界に弦の心配そうな顔が浮かぶ。
「氷室、くん?」
「気がついたか。気分は?」
「うん、あの……。お腹空いた」
「はあー?お前な、人が心配してやってんのに」
徐々にはっきりと周りの様子が見えてきて、めぐは辺りを見渡した。
殺風景な白い壁とカーテンで仕切られたスペース。
どうやら簡易ベッドに寝かされているようだった。
弦はベッドのすぐ横のパイプ椅子に座っている。
「ここって、救護室?」
「ああ。覚えてないか?お前テレビのロケのあと倒れたんだ」
「あー、思い出した。早起きして貧血気味だったのに、朝ご飯も食べずにアトラクション乗ったから」
「うん。なんとか撮影は終わったから良かったけど、お前はもう少しここで寝てろ。課長には俺が話しておく」
「ありがとう、氷室くん。あの、もう一つお願いしていい?」
か弱い声で尋ねるめぐに、弦は「なに?」と顔を寄せる。
「……食べ物、ちょうだい」
途端に弦はガクッとこうべを垂れた。
「お前なあ、しおらしく弱っててなかなか可愛いじゃねえかと思ってたのに。色気より食い気かよ」
「だってお腹が減って、力が出ないんだもん」
「はいはい。じゃあアンパンでも買って来るよ。待ってろ」
「うん、ありがとう」
弦が出て行くと、救護室に常勤している30代のナースが様子を見に来た。
「雪村さん、具合はどう?」
「はい、もう大丈夫です」
「でもまだ顔色が悪いわね。起き上がったら危ないわ。しばらくここでゆっくり休んでて」
「すみません、ご迷惑をおかけして」
「ううん、全然。それにしても氷室さん、めちゃくちゃかっこ良かったわよ」
え?と、めぐは首を傾げる。
「ぐったりしたあなたをお姫様抱っこで運んで来たのよ。『貧血で倒れた。すぐにベッドへ』って言ってね」
「そうでしたか」
「もうね、ドラマのワンシーンみたいだったわよ。だってお二人とも美男美女でしょ?イケメンが美女を抱いて現れたから、あれ?これもテレビのロケなのかしらって一瞬思っちゃった。雪村さん、撮影の最後までがんばって、OK出た途端に倒れたって氷室さんが言ってたわ。プロ根性ね」
「いえいえ、そんな。単に絶叫マシンが苦手なだけなんです。お恥ずかしい」
その時パンと飲み物を手にした弦が戻って来た。
「めぐ、身体起こせるか?」
「うん、大丈夫」
「ゆっくりな」
弦がめぐの背中に手を添えて、少しずつ上半身を起こす。
一瞬視界が白くなり、めぐはギュッと目を閉じた。
「大丈夫か?めぐ」
「うん、もう平気。ごめんね、氷室くん。色々迷惑かけちゃって」
「気にするな。じゃあ俺はそろそろ戻るから。あとでまた様子見に来る。ゆっくり寝てろよ」
「ありがとう」
弦はめぐに頷くと、ナースに「よろしくお願いします」と頭を下げてから救護室を出て行った。
ぼんやりとした視界に弦の心配そうな顔が浮かぶ。
「氷室、くん?」
「気がついたか。気分は?」
「うん、あの……。お腹空いた」
「はあー?お前な、人が心配してやってんのに」
徐々にはっきりと周りの様子が見えてきて、めぐは辺りを見渡した。
殺風景な白い壁とカーテンで仕切られたスペース。
どうやら簡易ベッドに寝かされているようだった。
弦はベッドのすぐ横のパイプ椅子に座っている。
「ここって、救護室?」
「ああ。覚えてないか?お前テレビのロケのあと倒れたんだ」
「あー、思い出した。早起きして貧血気味だったのに、朝ご飯も食べずにアトラクション乗ったから」
「うん。なんとか撮影は終わったから良かったけど、お前はもう少しここで寝てろ。課長には俺が話しておく」
「ありがとう、氷室くん。あの、もう一つお願いしていい?」
か弱い声で尋ねるめぐに、弦は「なに?」と顔を寄せる。
「……食べ物、ちょうだい」
途端に弦はガクッとこうべを垂れた。
「お前なあ、しおらしく弱っててなかなか可愛いじゃねえかと思ってたのに。色気より食い気かよ」
「だってお腹が減って、力が出ないんだもん」
「はいはい。じゃあアンパンでも買って来るよ。待ってろ」
「うん、ありがとう」
弦が出て行くと、救護室に常勤している30代のナースが様子を見に来た。
「雪村さん、具合はどう?」
「はい、もう大丈夫です」
「でもまだ顔色が悪いわね。起き上がったら危ないわ。しばらくここでゆっくり休んでて」
「すみません、ご迷惑をおかけして」
「ううん、全然。それにしても氷室さん、めちゃくちゃかっこ良かったわよ」
え?と、めぐは首を傾げる。
「ぐったりしたあなたをお姫様抱っこで運んで来たのよ。『貧血で倒れた。すぐにベッドへ』って言ってね」
「そうでしたか」
「もうね、ドラマのワンシーンみたいだったわよ。だってお二人とも美男美女でしょ?イケメンが美女を抱いて現れたから、あれ?これもテレビのロケなのかしらって一瞬思っちゃった。雪村さん、撮影の最後までがんばって、OK出た途端に倒れたって氷室さんが言ってたわ。プロ根性ね」
「いえいえ、そんな。単に絶叫マシンが苦手なだけなんです。お恥ずかしい」
その時パンと飲み物を手にした弦が戻って来た。
「めぐ、身体起こせるか?」
「うん、大丈夫」
「ゆっくりな」
弦がめぐの背中に手を添えて、少しずつ上半身を起こす。
一瞬視界が白くなり、めぐはギュッと目を閉じた。
「大丈夫か?めぐ」
「うん、もう平気。ごめんね、氷室くん。色々迷惑かけちゃって」
「気にするな。じゃあ俺はそろそろ戻るから。あとでまた様子見に来る。ゆっくり寝てろよ」
「ありがとう」
弦はめぐに頷くと、ナースに「よろしくお願いします」と頭を下げてから救護室を出て行った。



