8月10日。
遂にランタンフェスティバル初日と弦の誕生日がやって来た。

目が覚めると、窓の外には綺麗な青空が広がっている。
めぐはお気に入りのラベンダーカラーのセットアップに着替えると、髪型は左サイドでまとめて編み込みにした。
最後にアクセサリーボックスを開いて、ブルースターのネックレスを手に取る。
ボックスには、誕生日の夜にレストランのスタッフが撮影しためぐと弦の写真が挟んである。
写真の中の自分にふっと微笑むと、めぐはいつものようにネックレスを着けた。

「これでよしっと。いい日になりますように」

両手を組んでお願いすると、笑顔でマンションを出た。

「おはよう、氷室くん。ハッピーバースデー!」

事務所に着くと、一番に弦に声をかける。

「お、ありがとう。ご機嫌だな、めぐ」
「うん!ところで好きな人出来た?」
「は?いきなりなんだよ。誰かに聞かれたらどうする」

弦はキョロキョロと辺りを見渡した。

「大丈夫、まだ早いからみんな来てないよ。出来たの?好きな人」
「聞くまでもないだろ?出来る気配もない」
「そっか!良かったー」
「おい、どういう意味だ?」
「あ、ごめんごめん。あはは!じゃあ今日もお仕事がんばろうね」

テンションの高いめぐに、弦は呆れてため息をつく。

「はいはい。楽しみなんだな、ランタンフェスティバルが」
「そうなの!もうわくわくし過ぎて、今日はたとえ転んでも笑っちゃいそう」
「不気味だからやめれー」

そうこうしているうちに、環奈や他の社員達も出社してくる。
めぐはいつものように仕事をこなしつつも、常に時計を気にしていた。